2012年8月17日金曜日

R-SYSシリーズ(2012年モデル)の比較


というわけで購入したMavicのR-SYSなんですが、販売店などの謳い文句では新機軸が盛り込まれた新世代ホイールと言われています。具体的にどういったホイールなのかまとめてみました。と言っても素人まとめなので鵜呑みはしないでください。

まずは2012年モデルのシリーズラインナップから。ちなみに現行の3グレードに切り替わったのは2010年モデルからだそうです。



R-SYS SLR(クリンチャー)/メーカー希望価格 210,000円

まずは最上位モデルのR-SYS SLR。このホイールだけチューブラータイヤ用のものもリリースされています。特色はエグザリット加工と呼ばれるリムコーティングです。このコーティングにはリム磨耗の低減とブレーキ性能の向上という効果があります。また、リムの交換時期になると色が変わって教えてくれるそうです。何色になるんでしょうね?地金が出てくるのでしょうか。

このリムには専用のブレーキパッドが必要なのですが、リム表面がギザギザなので最初の500kmくらいはパッドがガリガリ削れていく(大根おろしと揶揄されています)そうです。このときにパッドから特殊な製剤がリムに浸透し、さらにリムを強化してくれるのだそうです。この頃になるとパッドの減りも落ち着くそうですが、1個目のパッドは大抵磨耗してしまっているのでそのあたりが交換どきなのだとか。

あとは全体的にダークグレーの色味で統一されているため、バイクとのトータルコーディネートが可能ってあたりでしょうか。ホイールはデザインとカラーも重要ですよね。ブラックベースで赤が差し色になっているフレームなんかとよく合いそうな気がします。

じゃあR-SYSとSLのブレーキには特に何もされてないのかと思いきや、UBコントロールという技術でリムブレーキ面が研磨されているので、ブレーキ時の制動摩擦が改善されており振動が無くなっているとのこと。確かにエグザリットコーティングされているSLRにはこの技術は使えないでしょうね。


UBコントロール

R-SYS SL

名前に冠されているSLはSuper Lightの略のようです。その名の通り極限まで軽さを追求していて、R-SYS比で95g(フロント45g、リヤ(M10)50g減)も軽くなっています。そのためにどんな技術を使用しているかというと、R-SYSとR-SYS SLRはISM(インタースポークミリング)というスポーク間のリム表面を削る技術で軽量化を果たしているのですが、SLではこのコンセプトをさらに追求して側面も削るISM3Dという技術を使用しています。また、ハブ(後述します)の素材も一部でカーボンやチタンが採用され、ここでも軽量化を図っているようです。

ISM

ISM3D

また、ホイールの中心にはベアリングというパーツが存在しています。これは要するにホイールの軸受けのことで、この部品の転がり抵抗が軽いほど漕いだ時の出力がスムーズにホイールに伝わるため、メーカーはどこも独自の技術を開発して鎬を削っているようです。

MavicではQRM(クオライト・デ・ロールメンツ・マヴィック)というベアリングシステムを採用しており、R-SYSとSLRではQRM+、SLではQRM SLという上位技術が用いられています。QRM+ではC3レベルの精度で製作されており、シーリング(簡単に言うと軸受けの蓋らしいです)が2重になっているので耐久性が向上しているとのことです。QRM SLはこの技術の精度をさらに高めることで、QRM+よりも12%も軽くすることに成功しているそうです。元々精密な加工がされている小さな部品の重量をさらに1割も削るってすげぇ大変なことだと思います。

C3レベルってなんじゃいと思って調べてみたのですが、これは軸受けのすきまの大きさのことらしいです。具体的にはμm(マイクロメートル)単位の精度らしいです。ちなみに数字が小さいと隙間の大きさがちいさくなるらしい(?)です。このへん計算式とかいっぱいあって難しくてよくわかりませんでした。


QRM+

QRM SL

R-SYS /メーカー希望価格 157,500円

2011年モデルまでは147,000円(メーカー希望価格)でホイールのみの販売でしたが、2012年モデルからWTS(ホイール・タイヤ・セット)化されて157,500円となりました。ホイール本体のスペックは変わらず、カラーリングだけ変更されました。2011年モデルまでは通称レッドカーと呼ばれているようですが、写真を見る限りこれオレンジじゃね?と思います。もっと鮮やかな赤だったら欲しいと思ったかもしれません。今となっては相当探さないと見つからないと思いますけど。

2011年モデルのR-SYS

R-SYSはシリーズのエントリーモデルで、R-SYSシリーズの特徴となっている独自のテクノロジ-や素材が多く使われています。

まず代表的なのがTracomp(トラコンプ)テクノロジー。名前の由来はTraction (トラクション:引っ張り)とCompression(コンプレッション:突っ張り)の2つからきています。通常のホイールはスポークにテンション(引っ張る力)をかけて真円を保っています。この場合カーブの時は内側のスポークに荷重がかかり、外側のスポークからは荷重が抜けるのでたわんでしまいます。R-SYSシリーズの場合は、使用されているカーボンファイバースポークのコンプレッション性能によってこのたわみを防いでいるそうです。

Web上で安心して坂を下れると評価されていますが、その要因はこの技術によるものだと思います。通常のホイールの場合は無意識のうつにホイールのたわみ分を補正しながらカーブを曲がるのですが、R-SYSの場合はそういったたわみが無いので自分の想定どおりのライン取りができるのです(と、OTRの店長さんが言っていましたw)。

スポークにはトラクションもかかっているので、カーブ以外の場合(普通に走っているとき)は普通のホイールと同じようにたわみが防止されています。しかも、通常剛性が高いと振動がモロに乗り手に伝わってしまうので乗り心地は悪化するのですが、カーボンスポークは振動軽減性能が高いため、高剛性と乗り心地の良さが両立しています。

ただ、良いことばかりでもありません。スポークの形状が丸スポークなので、エアロスポークが採用されたホイールと比べると高速度域でのエアロ効果が発揮されないため、抵抗が大きくなってしまいます。また、トラコンプを実現するためにカーボンスポークがリムとハブに固定されているため、振れ取りの際はベアリング内の部品を外してから出ないと作業ができないそうです。自分の場合、振れ取りなんてできないし高速度域のスピードも出せないのでデメリットにはなりませんけどw

自分はてっきり全てのスポークがカーボン製なのだろうと思っていましたが、リアホイールのスプロケ側のスポークだけジクラルという耐久性の高い軽量アルミニウム合金が使用されているようです。どうしてアルミスポークが使われているのかはわかりませんが、スプロケが付いている側の重量配分や強度がうんぬんかんぬんといった複雑な計算の結果なのでしょう。

ハブにはFTS-L(フォース・トランスファー・システム・ライト)という技術が使用されています。ハブは外から見た時にホイールの中心に見える筒のような形状の部品のことで、内部には前述したベアリングという部品が収められています。ハブボディに付けられた爪(この爪を通してホイールを回す動力が伝達されています)をスチール製のパーツで補強することによって、フルアルミ製のハブボディ(これで軽量性を維持できます)ながら、高い強度を確保しています。この技術によってぺダリングパワー伝達効率を向上させています。

Mavicのハブは構成部品が少なく、シンプルな構造になっている反面、すぐに玉当たり調整が必要になるそうです。玉当たりについては自分もまだよく分かっていないのですが、こちら(画像はなくなっていますが)のY's Roadの記事に分かりやすい説明が乗っています。

また、リムの素材としてマクスタルというマヴィック独自のアルミニウム合金が使われています。これは強度、耐食性が良好な6000番台の6106合金と比べて30%ほど耐久性が高いのだそうです。R-SYSシリーズはこの素材を用いることで今までと同じ強度で軽量なリムを実現しているのでしょう。

リムの成型や構造にも独自の技術が使われています。リム材を円形に丸めた後、ジョイント部分を溶接した継ぎ目を滑らかにするために圧延されます。Mavicではこの技術をSUPと呼んでおり、処理後のジョイント部の強度上昇とブレーキ時の振動軽減、ホイールバランスの向上という効果を挙げているようです。

また、構造的にはFOREテクノロジーという技術が採用されており、リムのスポーク面にのみ穴を開ける処理によって20%の剛性上昇と4倍もの耐疲労性を獲得しています。また、これはチューブ・タイヤ側にリームテープを貼る必要が無くなるので、その分の重量軽減にも繋がっています。


FOREテクノロジー

現在、MavicではWTS化が推進されており、2013年モデルではキシリウムのWTS化と80mmディープリムモデルのリリースが控えているそうです(R-SYSのホイール性能に違いは無いということが2012年モデルの購入に踏み切った大きな理由でもあります)。

R-SYSシリーズではSL以外がWTSでリリースされており、前後別設計のMavicのイクシオンタイヤ(フロントがグリップリンク、後輪がパワーリンク)がセットされています。その名のとおりハンドルと直結しているフロントタイヤでは、コントロールを失わないようグリップ力に秀でた設計のタイヤを、動力が伝わるリヤタイヤにはグリップ力と回転抵抗の低減を両立させたもの、というようにそれぞれ専用に設計されたものを使用しています。フロントとリヤで違うタイヤを履いているという人はたまに見かけますが、メーカー側でリリースされているのは珍しいのではないでしょうか。Mavicのこだわりを感じます。

色々と調べた結果、R-SYSをヒルクライム用に極限まで軽量化したのがSLという印象です。SLRはR-SYSと基本設計が一緒で、リムがエグザリットコーティングされているのに20g軽くなっているようです。コーティング分アルミの量が減ったって事なのかな?なんにせよ、全体的な性能を向上させたのがSLRということなのでしょう。


まとめるとこんな感じでしょうか。


SLは目的がハッキリしているのでいいのですが、R-SYSとSLRの違いはチューブラーに対応しているかということとエグザリット加工の有無、僅かな軽量化、カラーパターンの差といったところでしょうか。チューブラーの場合は選択の余地がありませんが、クリンチャーユーザーの場合は色味に一目惚れするか、エグザリットを使ってみたい!という人でない限りR-SYSの購入で良いのではないかと思います。所有欲を満たしてくれるというのもあると思いますが、そのためにあの価格差を払えるかと言うと…俺は無理ですねw

以上、R-SYSを買って良かったなという(SLRを買えばよかったと後悔したくないための)理論武装でしたw

長々とお付き合いいただき有難うございました。

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